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yukari
菊川[KIKUKAWA]|選書|ブックシェルフディレクション
居心地を邪魔しないこと
ホテルの一室という場所はある一定の期間だけ、訪問客の部屋=居場所となります。
年齢・国籍・嗜好、さまざまな人をおおらかに包み込んで、安らいだ時間を提供する、それがホテルの担う側面だと考えます。
本というものはとても力が強いものです。あえてホテルの客室に据えるならば、その本のなかでゆったりと時間が流れていて主張しすぎず、でも凛とした立ち姿でいてくれる、そんな本がよいと感じました。
所縁をひもとく
”岐阜名産の雨傘と提灯を作る家の多い田舎町の澄願寺(西方寺)には、門がなかった。”
この一文で始まる川端康成の「篝火」- ある女性との恋の思い出が、岐阜の景色とともに綴られている小説です。
篝火(かがりび)は、長良川の夏を映す鵜飼舟にかけられて、水面を朱く染める灯り。
若き日に初恋の火を胸に灯した川端が、愛しい人と眺めたであろう夏の風情は、今もそのまま、この岐阜の河畔に生きています。
青春を経て川端が世界に残した文学を、この河畔の一室で感じてみるのも趣深いことです。
「窓辺のこと」著:石田千/画:牧野伊三夫/出版社:港の人
「まどみちお詩集」出版社:角川春樹事務所
「暮らしを旅する」著:中村好文/出版社:KKベストセラーズ
「夕映え少女」著:川端康成
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